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レストラン&コミュニティ「Iomante(イオマンテ)」

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シェフの気まぐれレシピin釧路

クレーム、悪評、異物混入 『食べ物に虫が!』 

  • 2015.1.11
  • 食材 食育 食生活

今年は新年早々、テレビを付けたら賑わっていました。食品業界の異物混入騒動。

「離乳食に虫が入っていた」
「ハンバーガーにビニール片」
「対応した店員の態度が悪かった」
「事実を公表しない企業体質」
などなど、

 

「異物混入」食べ物を扱った仕事をしている人なら、すくなからず1度は”加害者”側になった経験があるのではないのでしょうか。

 

たとえば、イオマンテだって、オープンから7年間の間に3回も、虫が料理に入っていたことが僕の記憶に刻まれている。
ハーブ類や野菜をしっかり洗いきれずに付着していたのか、店内を飛んでいた小さな虫が、料理にとまってしまったのか、ともかく事実として料理の上に、虫がいた。

そのうち1回は、お客様と一緒に店内に迷い込んだ大きな蛾が食事中のお客様の料理に入ってしまった最悪の事件だった。

どんな理由にしても、幸せな時間を過ごすために来店されたお客様には、なんらお落ち度もない。お店側は最大限にその悲劇のおこる可能性を潰し、起きてしまったことにはできる限りのケアと、幸せな時間を提供できなかったことにしっかりと謝罪するべきだと思う。
でもこれは、「飲食店ビジネス」としてではなく、ふつうに人としてコミュニケーションをとっていく中で当たり前のことだと思い、自店のスタッフにもそう指導している。

 

とうぜん、スタッフだって生身の人間。仕事に責任をもってやっている人であればある程、自分が悪くないと思いたいし、
たとえば料理に髪の毛が混入していた場合は、『でも、うちの従業員に、こんな髪の色の人はいないじゃないですか!だからお客さんの毛ですよ!』と、自分達に非がないことを僕に訴えてくるのを、いままで色々な職場でも体験してきた。(そういう子達ほど、ほんとに責任感があって、熱心だったな。)

 

でも、レストランが販売しているのは「食べ物」ではなく「満足や幸福感」。クレームが出たり、お客様が不快になった瞬間に、たとえお店側には非が無くても、僕たちはしっかり謝罪しなければならない。謝罪とはなにも金銭的なことではなく、心から詫びる事。

 

たとえるなら、
お世話になった大切な人に、贈り物としてお菓子をとどけてみたら、その人は甘いものが嫌いでした。

甘いものが嫌いなのは相手の「勝手な好き嫌い」。

でも、『あ、そうとは知らずに本当に申し訳ないことをした』とお詫びの気持ちを伝えるはず。 その次訪れた時には、甘くない別のお菓子を『この間は気が効かず、ごめんなさい』と渡すでしょう?

 

これと一緒で、自分に非が無くても、相手の事を大切に考えるのなら、謝る。
これが接客の基本姿勢です。

異物混入以外のクレームや、ネットや口コミの悪評についてもおなじだと考えています。

 

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一方、僕は自店のスタッフが他店などを固有名詞を出して非難することを、厳しくとがめ、認めない。他店の失敗や対応を、稚拙な言葉で非難する人間は、自分が提供側になった時には総じて、それ以下である。

 

僕の会社で勤務している彼ら彼女らは、自分らが思い描いたサービスや商品を、その思い描いた100%の完成形で提供する難しさを、日頃から体験しているはずだから。

 

『どうして、こんなにお客様の来店のタイミングがかぶるのか?ゆっくりご案内できないよ!』
『え!なんで、こんな日に限って、「予定があるから料理、急いで出して。」って! あちらのお客様もお子様連れなので急いであげたいのに!』
『はい!?この状況で、ベジタリアンっていまさら言われても!』

 

いろいろな、想定外のなかで、

 

『あそこのテーブルは、あの食材を紹介してあげたかった』
『あのお子さんは疲れて途中で騒ぎはじめてしまった。もっと早く料理を出してあげたかった。』
『あのお肉は、本当はあと1分、休ませたかった』
『この野菜は、生より、ゆっくり加熱した方がポテンシャルは引きだせたのに』

と、営業が終わった後に、自分の100%を80%へ妥協せざる得なかった瞬間を悔んでいます。

なので、このような体験をしているはずのスタッフ達が、他の店舗の商品・サービスを稚拙に非難することが、おなじ「プロ」として許せないわけです。
われわれは消費者である瞬間も、プロであることを忘れてはいけない。

 

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そんな事を日頃から感じているせいなのか、ここ最近の一連の報道には、ちょっと違和感を感じる。
いつだかの食品偽装騒ぎのときも感じた感覚。

「離乳食に虫が入っていた」
「ハンバーガーにビニール片」
「対応した店員の態度が悪かった」
「事実を公表しない企業体質」
などなどが、かなりセンセーショナルに報道されている。

前記したとおり、異物混入はゼロを目指さなければならない。提供側が「だって、仕方がない」と考えてはいけない、それはあたりまえ。

 

もう10年以上前に、僕が修業時代にいた調理場での話。

その日、とどいた『苺』に、虫がたくさん付着していました。僕の上司は、その外装に記載のあった生産者の電話番号に電話して、クレームを付けたわけです。

『ちょっと、おたくの苺、虫ついててひどいよ!』

すると、農家のおっちゃんは、こういい返してきたそうです。

『なんだい! あんたの店は、虫も食わないものを、客に食わさせるのかい! じゃあ、うちのイチゴは使わないでくれ!』

まあ、こんな言い返しをする農家さん、ほめられはしないのですが、でもきっと本音でしょう。

~~~~~~

『食の安全』とは、かなり多面的に複雑なものです。
“虫”だけを気にするのなら、農薬を多用すれば良い。農薬が気になるのであれば、その分、害虫のリスクは高くなる。

ましてや、離乳食に使う野菜。 それは、残留農薬等の厳しいチェックがある分、害虫の混入リスクはたかくなるに決まっている。洗剤で洗うと今度は洗剤成分の混入リスク。 こまかく砕いてから流水でしっかり洗浄しますか?水溶性の養分は全部流れます。

 

『そこを頑張って、人間の目視などで努力するのが企業責任でしょ!プロなんだから!』

 

という声が聞こえてきそうですが、 そんなこと言う人は提供側になったら、それ以上にできますか?
僕も小さな子供がいるので、虫が入っていたら、そりゃ嫌だ。でも、そこからはしっかりと冷静になりたい。

食品業界は、日本の各産業の中でも、圧倒的に価格競争にさらされている。色々な資料を見ればわかるが、就職先人気ランキングや産業別年収のワースト、いわゆるブラック企業率も、ぜーんぶ食産業。
もう、人間力を投入できるギリギリまでやっている。こっから先は奴隷制度でも投入しなければ無理じゃないかな?

 

『対応した店員の態度が悪かった』
この日本のありとあらゆる接客業のほぼすべて、実際に現場でお客様に対峙するポジションにいるのは、アルバイトなどの非正規雇用の方です。
お客様から、突然のクレームを突き付けられた瞬間に、とっさに最高レベルの対応できる人間なんていますか?
態度が悪いのではないのです。ほとんどの場合は、その瞬間に「自分はちゃんとやっていた」という想いを、ぐっと飲み込むすべを知らないだけなのです。
誰だって、目の前でお客さんが怒っていたら、正常な精神状態ではいられない。
そこでの店員の発言の上げ足をとるなんて、ちょっとひどい。

 

『異物混入の事実を公表しろ!』

たしかに、毒物が大量に混入してしまったような、間違えなく大勢の消費者の体に悪影響を及ぼす緊急事態はそうすべきだとは思うが、虫とか、ちっちゃなゴミとか、

それを公表することは、ぼくだってその立場であれば出来ない。あったいう間に倒産だ。

大企業であっても、ちいさな個人店であっても、よってたかって無責任な民意の攻撃にさらされたら、ひとたまりも無い。
(テレビでは、よくわからん専門家が、初期対応がどーだ、会見の方法がどーだ、と言っているが、じゃあお前らやってみろ! と、ホントに思う)

実際に商品を作っている人間、現場で接客している人間は、そんな連中よりはるかにモノ作りに必死だし、いつもお客さんのことを考え、相手を”感情のある人間”として接している。 だから、上手に謝罪できないし、言葉選びに失敗する。

食品関連の企業だって、出来る限りの設備投資をして安全に努め、万が一の保障に備え保険だってはいっている。
僕が知っているほとんどの食品関連の社長さん、職人さん、ほんとに真剣にやっていいます。そういう人に限って、逆に何にも守られていない。

 

一昔前は、企業側が強く、消費者が弱かった。それは間違えない。 でも、現在はSNS等の普及によって、その立場は圧倒的に対等になってきた。 消費者はその気になれば企業と対等に戦える時代になった。

そうなると新しいマナーが生まれるはずだと僕は考えている。
マナーとは昨日まで、誰かがつくったものではない。今日も新しいマナーが出来上がっているはずなのだ。

 

自分が楽しみにしていた商品・サービスに、何か欠陥があったらそれはとても残念でならないでしょう。
でも、それは自分とその提供側との問題であるはずです。商品に欠陥があったのであれば、提供側はその部分をしっかり謝罪し、可能であるのであれば代替え品を。なにか賠償責任が発生しているのであれば、しっかり責任をはたす。それ以上でも、それ以下でもないのが、マナーなのではないでしょうか?

たしかに、それでも「この残念な気持ち・怒りをどうしたら!!」という気持ちは残るかもしれません。

だからと言って、自分の気持ちがおさまらないから、SNSでの拡散や、事実を公表しろといたずらに企業側に詰め寄る、いまの報道の在り方は、

「たばこやコーヒーを間違えた、コンビニの店員さんに土下座を強要している」のと、僕には同じく見えます。

こんなことを、民意として企業側に強要するようなことが正しいとなると、明日の自分の仕事を失う事になりますよ。

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大切なのは、作り手(生産者)と消費者の信頼関係が出来上がること。

あまりにこの一連の騒動が行き過ぎると、企業はリスク回避のため、責任を押し付ける先を、どんどん遠くに追いやります。

どういう事かというと、
だれだって、自分の親戚や友達には責任を押し付けにくですよね。企業も一緒です。できれば、いざという時には遠いところの責任にするのが、いちばん丸く収まります。

(最近多いですね、食品になにかあった時は、海外の工場に責任にして、とりあえず『日本人は悪くないです』という、幕引き。)

 

モノ作りをしている人間を、稚拙に追い込むと、結果的に『生産・加工という仕事』は日本から無くなっていきます。

どんどん、どんどん、皆さんの旦那さんや息子さんの仕事は無くなります。
どんどん、どんどん、料理を作れる人、野菜を育てられる人が日本からいなくなります。

 

なので、誤解を恐れずにいうと。(↓ちょっと悪い、ブラックなもう一人の自分が言ってます(笑))

 

『虫やビニール片、それぐらい間違って食べたって、大丈夫でしょ? そんなことより、目に見えない薬品などの食の危険や、本来人間が持っているはずの危険回避の五感が失いつつあることの方が、重要。

あなたの、旦那さんや息子さんが心をこめた仕事のミスをSNSで公表しますか?
あなたの奥さんが、おなたの帰宅の時間にあわせて用意してくれた料理に虫が入っていたからといって、土下座させますか?

非難しやすい一部分だけを責め立てるのは止めましょう。

僕のいる北海道は特に、食に関する生産者と消費者が身近にいる土地柄です。 レストランで食べたその料理は家の隣の、おっちゃんが心をこめてつくった畑の野菜かもしれない。

もっと多角的に問題をとらえて、お互いが対等に意見と協力が出来る信頼関係を目指してほしいです。』

 

と、長くなりました。
年末年始、ブログ更新をさぼった分、長文でした(笑)

まじめな話で、スイマセン!!

 

投稿日 / 2015年1月11日 16:23:10

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